吸血鬼

著 : 秋山 恵

遊撃



 遼二の告知から、明日で6日になる。

 エレナは紗季を壮介に預け、自分の部屋に戻っていた。纏めてある荷物から、あるだけの装備全てを引っ張り出す。

 趣味で集めた暗器の類が多く、棘の付いた指輪や袖の中に隠しておけるクナイや針のようなものがテーブルの上に並んでいる。

 銃火器の類は持っていない。扱えない物はあまりないが、基本的に刃物の方が戦いやすく好みに合っていた。

 グルカナイフとダガー数本、後は持てるだけの暗器を装着した。

 時計を見る。

 長い針が上を向いたら次の日になる。残り、およそ10分。

 選抜メンバーは、その日一番の飛行機でやってくるのだろうか。それとももうやって来ていて、日を跨いだら攻撃が始まるのだろうか。

 どちらにしても自分は囮になるつもりだし、運が良ければ全てを討ち取るつもりだ。負ければ紗季にも手が伸びるかもしれないが、その時は壮介の組織が介入するだろう。

 本当は、次の戦いでも手を貸そうとされたが断ることにした。これ以上関係のない人間を巻き込むのはどうしても避けたいと思っていた。それでなくてもたくさん巻き込んでしまっている。傷付く人間はもう増やしたくない。

 エレナは冷え込む夜の世界へ出た。まだ雪が多く残っている。特に日陰になっているであろう部分には、自分の身長と同じくらいの雪が残っていた。

 空気は冷たかったが、吸血鬼の身には心地よい位だ。

 空はまた曇っており、天気予報では先日同様の雪が降る見込みであると伝えていた。

「さて、どこで待とうかしら」

 全神経を集中させ、辺りの動き全てに気を配り、エレナは歩き出した。



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