平行世界のOntologia

著 : 柊 純

Act03:青竜


 時は少しさかのぼる。

 朝早くに目覚めたセシリーは、起床とほぼ同時にログインしたミシェルをつかまえ、ショッピング目的で町へ繰り出した。

 数日前にバージョンアップがされていたから、場合によってはレシピが解析されている。新しいアイテムが競売に出ているかもしれない。

 目当ては、ブランド物とのコラボで実装される“オシャレ着“である。今着ているワンピースも、先月実装されたブランド物だ。

 淡いピンク色でハートが散りばめられ、胸元に薔薇のアクセサリーがついている。

 手持ちの金額ギリギリだったが、在庫が一つであったため、発見と同時に購入した。

 レア度数が十段階評価で七の珍しいもので、かなり高価なものだった。

 防御力は無いに等しく、戦いに着ていけるものではない。

 目的の競売所は、ギルド本拠地に隣接している町、“ストーンブレッド“の中心部に建つドーム状の建物内にある。

 かなり広い売り場面積が確保されており、多数並ぶカウンターから、全国の競売データにアクセスが可能である。

 町は、辺境とは言ってもかなり大きい。本拠地から競売所までは、歩いて十分は掛かる場所にあった。

 セシリーは、視線をあちらこちらに移しながら歩いた。

 道中、見知らぬ人物が多数居ることに違和感を感じていたのだ。

 競売カウンター周辺である。それなのに、彼等からは購買意欲が感じられない。

 この町をハブにする商隊かとも思ったが、それにしては装備が厳つい。

 隣を歩くミシェルも同様に違和感があるらしく、辺りをキョロキョロと見回している。

 昨夜起きた純白天秤潰滅の報せは、まだカヤの耳にも入っていない。

 町へ出向いただけなので警戒はなく、戦闘用の装備は全て置いてきてあった。

 町中でのPVPは、一方的な場合は体力値をゼロに出来ない制限があるので心配は要らない。だが、町と本拠地の間にある空間は町の外になる。本拠地の建物内に入れば暫く安全になるが、特定の条件後に強攻状態に入れば安全ではなくなる。

「どう見ても囲まれてますね。感じ悪いです」

 そう言ったミシェルの手は、左手で剣の柄を弄り回している。

「ミシェル、自分の身は自分で守れるよね」

 競売リストを見ながら聞くと、ミシェルからOKのサインが返ってくる。

 オシャレ着を一通り見ると、剣のリストを見る。無骨だが威力の高いモンスタードロップ品の両手持ち用の大剣を買い、その場で装備した。

 下手な安い防具を買うなら強力な武器の方が良いと判断したのだが、それでも裸で居るようなもので、不安が残る。

 背中にズシリとした重みが加わった。

 武器を装備することでカマをかけただけだったが、周囲がザワめいた。

 昨夜のカヤが追いかけた件に関係するのだろう、直感的にそう感じる。

「間違いないよ、これって私達がターゲットだ・・・」

 セシリーはゆっくりと振り向いて、腕組みをした。姿勢がよく、モデルのような体型に造られたアバターなので様になる。

 ほぼ取り囲まれ、中には武器を構えている者もいた。数十人は居る。

 これだけの人数を事前準備もなく揃えられるギルドは、近辺にはない。

「何か用?」

 セシリーが剣を抜いて一歩踏み出す。ブーツの踵が石畳をカツリと鳴らし、緊張感が高まる。それを機に、次々と武器を構える音がした。

 喧嘩っぱやいセシリーにはおあつらえ向きの状況だ。

 広場にして袋小路と化している。テレポートしても良いが、その間無防備になるので危険が伴う。

 運良くテレポート出来ても、飛んだ先に伏兵が居れば、更に危険が待つ。倒されてそこに再ポップし、キャラのロストが待っている。

 サイアク、街中のポイントにホームを設定してあれば生き残れるが、今の状況を考えると、もう後の祭りである。

「昨日より多いし、敵の強さが分からない。このまま正面からぶつかるのは好ましくないし、逃げるにしても、テレポ先に敵が待ち構えてる可能性は高い。あそこは外だから・・・、詰んでるような気がするなぁ。ログオフに隙がなければ、一旦落ちてやり過ごすんだけど・・・」

「このゲームってキャラロストもそうだけど、色々とシビアですよねー」

 とは言うものの、今のこの現状を楽しんでいるようにも見える。

 笑顔の裏に見える鋭さは、喋りの緩急にも感じられるようだ。役者的なその口調には、セシリーもテンションを上げざるを得ない。

 ましてや、この窮地に陥ったようなシチュエーション。現実世界であれば脈打つ速度は確実に高くなっているはずだ。

「ミシェル、顔が笑ってるよー?」

「怖いですよ。これって、体力値ギリギリになって町の外に引きずり出されたりして、その後に倒されてホームに戻った後に待ち伏せくらったら、完全にキャラロストじゃないですか。アバターなんて何度でも作り直せるけど、時間をかけて育てた全てが失われるの。その期間の全てが無駄になるわ」

 とは言え、ミシェルのアバターは笑顔を絶やさない。それが演技かそうでないかは分からないが、少なくともセシリーにとっては有り難いものであった。

 現実世界であれば冷や汗の一つも出て、手も脚も震えているだろう。

 カヤと違い、テレパスのスキルが低いセシリーは、遠くに居るギルドメンバーやフレンドとは通話が出来ない。

 フォンストーンと呼ばれる媒体を使用すれば通話が可能だが、今この状況下で、そんなものを使うような悠長なことをしていられない。それは同行しているミシェルも同じである。

 救助の要請すら出来ない。

 緊張感の上昇と裏腹に動揺一つ見せないアバターに感謝する。

「どこから来たのか知らないけど!飛ばされたい人からかかっておいで!」

 剣を上段に構える。凛とした声がドーム内に響き渡った。

 その声に、数人が後ろに下がる。逆に自信があるのだろうか、剣を二本構えた背の高い男が一歩踏み出した。

 坊主頭で眉毛が無く、両耳に髑髏の形をしたピアスをしている。濃い青色をした軍服に龍の刺繍が入っていた。

(間違いない、青竜だわ・・・)

 坊主頭は、左手に持った短い剣を前に突き出し、右手に持った長い剣を、腕を曲げて平行に並べている。腰を低くして、ヒザを深く曲げている。

 相手の筋力スキルが高ければ一瞬で懐に飛び込まれる。そんな位置まで近付かれた。

 周囲が静まり返っている。

 様子を見ているのだろうか。誰も介入してこないので、相手が実力者の可能性を考えた。

 有名なプレイヤーであれば、セシリーも知っている。だが、相手は全くの無名で見た事がない。力量が測れないのは、恐怖感を倍増させた。

 装備の防御力が無いに等しい。場合によっては、一撃でホームに戻るだろう。

 ある程度まで近付いてきた坊主頭は、その場から踏み込んではこない。相手もこちらの力量は分かっていない。そのせいだろうか。

 いつまでもこの状態で居るわけにはいかない。打開するにはこちらから動かなければならないという、気持ちの焦りが出てきている。しかし、先に動けば突かれるのが予測出来る。

「掛かってきたら?見ての通り、私の装備は防御力ないのよ。ビビリなら誰かに代わってもらったらどう?」

 相手は挑発には乗らない。表情は設定で隠されているのだろう。システム頼みのポーカーフェイスである。

 ミシェルが状況を見かね、剣を構えつつ前に出る。刀身が紅く、普通よりも少し長い。普段はあまり使わないものだ。

 坊主頭の視線がミシェルに移る。その瞬間の隙を、セシリーは見逃さない。

 タンと石畳を蹴る音が聞こえ、次の瞬間には大剣が振り下ろされている。

 坊主頭の反応は非常に早く、剣を交差させて受け止めようとする。交差して受け止めさせた後、その体勢で剣の根元まで滑らせて懐に飛び込むつもりだったが、セシリーの兜割りが発動しており、二本の剣は鋭い金属音と共に折れ飛んだ。

 セシリーの攻撃自体は、リーチの長さが足りず、坊主頭を真っ二つにする事は出来ない。いつもの長刀を使っていれば、間違いなく両断しただろう。

 長さの違いにまだ慣れていない。

 大剣を振り下ろしきった直後に、セシリーは大きく後ろに飛んだ。競売カウンター前の、元居た場所に戻る。

 それと入れ替わるようにしてミシェルが前に出た。

 まるで光が走るようなエフェクトと共に、鋭い突きが坊主頭の腹部に吸い込まれる。回転の掛かったその一撃は、標的の体を同じ方向にぐるっと回転させて後方に居る数人を巻き込んで吹き飛ばした。

 それを機に、敵が動いた。

 ミシェルは一番最初に打って出た右側の男の武器を受け流し、その手で相手の首に剣を突きたてる。

 そこに、武器を変えた坊主頭が飛び込んできた。腹部の出血が痛々しいが、仮想世界では、動きに影響を与える痛みはない。

 坊主頭の獲物が、ミシェルの左胸部の少し下を貫く。

 白いドレスアーマーが血に染まり、体力値を表すバーが三分の一程、一気に削れた。攻撃が当たった場所が熱くなる。

 これがセシリーに当たっていたら、一撃で殆どの体力値を削られていただろう。

 ミシェルの剣が右側の男の首から引き抜かれて、坊主頭に振り下ろされる。だが、空を虚しく刻んで当たらない。

 敵の攻撃は休まらず、ミシェルに集中して左右から剣撃が浴びせられる。

 左腕にくくりつけてあるバックラーで片方を防ぎ、右前方からの攻撃は剣ではじく。

 中心の隙が出来たところに再度、坊主頭の攻撃が浴びせられた。右袈裟懸けに斬り付けられるが、ギリギリで後ろに飛んでこれを避ける。

「強い・・・」

「アンタも十分強いよ。驚いたわ・・・」

 坊主頭が初めて喋った。低い声で、少ししゃがれている。

「こんなやり方じゃなく、正々堂々と戦いたかったな。まぁ、負けるかもしれんが」

 そう言いながら笑う坊主頭の後方、セシリーは遠くに見覚えのある人物を見付ける。

 赤いクロークを着たその男は、ミシェルと坊主頭の戦いに視線が集中しているのを良い事に、余裕で詠唱をしている。

「ミシェル、しゃがんで!」

 坊主頭が目を見開いて背後を振り返る、と同時に激しい雷撃音が鳴り響いた。

 激しい閃光がほとばしる。平行広範囲に広がる珍しい精霊魔法だ。ロストマジックに位置付けられる高位魔術の類だろう。

 タイミングよく避けたセシリーとミシェル以外は、隙を突かれた形で全員それを食らう。麻痺の属性があるらしく、バタバタと倒れだした。

 威力は弱いが、効果は抜群だった。

「長くはもたんぞ!ハイロウの拠点まで走れ!」

 セシリーがミシェルの腕を掴んで走りだす。

 ブーツの石畳を踏みつける音がカツカツと鳴り響き、赤いクロークの男の下へ近付く。フードの中の初老の男の顔を覗き込むようにして、

「ヒデマサさん、ありがとうございます。助かりました」

 と、お礼を言うと、パーティに誘う。

 あれだけの人数を一度に麻痺に追い込むヒデマサのキャパシティの高さに、敵でなくて本当に良かったとすら感じていた。

「いや、こっちも大変だったからな・・・、予想した事態になっているようだ。とりあえず作戦を練りたい。急いで移動しよう」

「はい、助かります。拠点まで行けば、とりあえずはゆっくり話せると思うので・・・」

 セシリーはヒデマサに一目を置いている。

 純白天秤自体は大きくないギルドだが、錬金術のスキルが高い以前にソーサラー集団である。

 ソーサラーには、魔術のスペルを文法的に組み立てて詠唱するだけの記憶力と頭の回転の速さが必要だ。

 魔術書には必要なスペルを書き出すメモスペースがあるが、二ページ(見開き分)しかないので、臨機応変に対応するためには暗記が必要になる。

 セシリーには、そういった細かい暗記をするだけの器量はない。本来、彼女が脳筋と呼ばれる所以はここにある。

 三人は、ストーンブレッドの街中を走って移動した。

 青竜はドーム内に集結していたらしく、街中には他の敵は見当たらない。

 平常通りであれば、街中には他のギルドメンバーが多数歩いてるはずだが、今日に限っては見かけない。

 昨日のカルロスの態度や、今日のこのヒデマサの様子。この辺境の地に何かが起きている。

 たった一晩である。ここまで変わるには余程大きな力が加えられている。そう感じていた。


 三人は、AngelHaloの拠点目掛けて走った。

 仮想世界の空模様まで変化が起きている。単純な天候の移り変わりのはずが、状況という添加物によっておどろおどろしい何かにすら感じられる。

 冷え始めた空気が、砂埃と共に体を包む風となって吹き荒んでいる。体を叩く砂煙が妙に現実味を帯びていて、コンピュータによって解析して作られた、雨の前に感じられるニオイが充満し始めた。

 拠点が見えた辺りだろうか、夕立の如く雨が降り始めた。

 ポツポツと大粒の雨がバラバラと地を叩く音、辺りを叩く水滴は量を増し、次第に急加速するようにしてザァザァと鳴らし始める。それに併せて足音が聞こえ始めた。

 振り返ると、後方から追っ手が迫っているのが見える。

 先ほどの連中が全て居るわけではなさそうだ。坊主頭の姿が確認できない。これと同時に、前方に巨大な盾を持った重騎士が道を塞いだ。

「すまない。さっきのは暫く使えないから、強引に突破するしか方法が考え付かん。詠唱の時間をくれれば、あの程度は二~三人弾き飛ばせるが」

 ヒデマサの冷静な言葉にミシェルが肯いた。セシリーは足を止めると踵を返して後方へ体を向けると、武器を構える。

「この分だと、ホームポイントも囲まれてるね。倒されたらアウトと思った方が良いかも」

 自棄になっている節があった。

 死んだところで、自身本来の肉体に影響があるわけではないが、キャラクターのロストに関しては痛手だ。数年間掛けて育てたキャラがその一瞬で消えてしまうなんていうのは、運営の暴挙だろうとさえ感じられる。

 ヒデマサの詠唱が開始され、その前後をセシリーとミシェルが守る。敵の数が多過ぎるので、全力で攻撃された場合は非常に危険だ。

 追っ手は、セシリーが剣を構えたのを見て歩みを止める。

 先ほどの坊主頭との戦いの動きが頭に焼き付けられているのだろう。一般のプレイヤーから見れば、規格外の動きをしているのだ。自ら怪物の目の前に立つようなものである。

 ヒデマサの詠唱が長い。構文の間違いがあるわけではなさそうだ。が、同じ内容を繰り返し唱え続けている。ループして繰り返しているようにも聞き取れた。

 セシリーにはそれが、単純な増幅としての繰り返しなのか、また別の意図があるのかまでは分からない。

 ただ、そばに立つ初老の男の能力を信じて敵の牽制を続けるだけしか出来ない。

 ヒデマサの周囲に炎が渦巻き始める。通常の火炎魔法とは違った。幾度となくループされた構文は、属性ではなく、攻撃形態を決めるものらしい。

 炎の渦はヒデマサの正面に移動し始めると、まるで一本の槍のように鋭く尖っていく。凝縮された高出力魔法の塊は、揺らぎが消えて質量を持つ本物の槍のように成型される。

 火炎の熱気がセシリーの背後にまで感じられた。

「ミシェル、下がってくれ」

 ヒデマサは、光り輝く槍を宙に浮かべ、前方に立つ重騎士の方へ狙いを定める。

 ヒィィンと高い音が鳴り、ビュッと何かを振るような音がすると、真っ直ぐ正面に向けて射出された。

 光の粒子が、鍛冶で叩く金属の火の粉のように飛び散り、軌跡上の雨水が煙を上げる。

 精霊魔法は、スペルの組み方によっては、ドラゴンを一撃で戦闘不能にすることが出来る。魔力を共有する術を知っていれば、想像を絶するアタッカーとなるのだ。

 今、ヒデマサが使用したものも、セシリーとミシェルの魔力を借りている。この威力を持って、正面の壁を突き破ろうと言うのだろう。

 ズンと低い音が響き、爆風が周囲を包む。軽い衝撃波がミシェルの元まで届いた。

 前方で壁になっていた重騎士は、中心の数人が吹き飛ばされている。

 金属製の分厚い鎧がネジ曲がっており、その威力には鳥肌が立つような思いになる。

 周囲に並んでいた連中も、重なるように横倒しになっていた。

「これで、大きいのは暫く使えんぞ」

 この老人風の男が、ここまで頼りになるとは、今まで一度も思ったことはなかった。

 片腕をゆっくり下ろしながら、落ち着いた動作で振り返るヒデマサに対し、セシリーの気分が妙な感覚に陥る。

 水滴が鼻筋を通って口を避け、顎まで滴り落ちる程の時間、見とれていた。

「セシリーさん、行きましょ!」

 ミシェルに腕を掴まれ、走り出す。

 後方の集団は、呆気に取られて動けなくなっている。もしくは、飛び込むと返り討ちに合うのだと、本能が察知しているのかもしれない。

 どんなにリアルであってもゲームだと認識出来る者、仮想と現実が混ざってしまっている者、どちらであっても恐怖を感じさせるものがある。

 それはゲームシステムの上である事実や、自分が死なないと知っている安心感が届かない、生き物本来が持つ反射的なものなのだろう。

 首から下がったフォンストーンが、カヤからの着信を意味するベルを鳴らしている。

 拠点は目の前なので、取らずに飛び込んだ。ギルドメンバーとそのフレンド以外受け付けない設定に変更されている。

 息一つ切らさない三人は、扉の外を見る。

 拠点は、そのほぼ全域を囲まれていた。

「セシリー、情報屋から連絡が入ってる。昨夜の件は騙し討ちだったわ」

 表情一つ変えななかったヒデマサが、渋い顔をしている。カヤは、その表情をどう受け取るべきか判断しかねた。

「ヒデさん、説明いただける?純白天秤は潰滅、殆どのプレイヤーキャラがロストしたと聞いてます。言いづらいけど、最悪の場合、あなたがユダである可能性もある」

 そう言うと、腰の刀に手をかける。

 青い金属と美しい波紋が、鞘と鍔の隙間から見えた。

 カヤが本気で戦う時にしか使わない"カネサダ"である。

「カヤ!ヒデマサさんは、私とミシェルを窮地から救ってくれたのよ!今の話だと仲間も大勢失っているのに!」

 セシリーが割って入る。

 カヤに食い付くのは非常に珍しい。そんな光景を、初めて見たミシェルは、心配そうな顔で二人を交互に見た。眉の両端が下がり、瞳に輝きが増している。

「いや、言う通りだ。中に入れば外の連中を手引きすることも可能だからな。それでも、フレンドが入れる設定になっているんだ。カヤの心と覚悟は分かっている。誓おう、裏切りはない」

 その言葉で、セシリーの感情を抑え込んだ。

「ヒデさん、ご免なさい。少し言い方が悪かったわ」

 カヤはいつも冷静にセシリーを見守っている。今の言動の裏にあるのも、セシリーが魂としているギルドを、死守するために出た言葉だ。

 それくらいは分かっているので、特に怒りを感じたりもしない。

 ヒデマサは、昨夜の状況を話し始めた。



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