ショートショート

著 : 秋山 恵

安眠妨害、しない。


「こんにちは。いやぁ、何度も何度も申し訳ない。まさか前回の回路がそのまま残ってて、そっちにも接続されているとは」

「いや、構わないよ。君のそういうところにはもう慣れたからね。次に実験する時は、少し離れてることにするよ。それにしても、まさかレシートだけが大量に増えていく機能とは、前回の機能には驚いたよ・・・」

「フフフ・・・、そこでだ。これなんだ!」

「ふむ、今度は新しいケースに入れたんだね。また記憶をなくす装置かい?勘弁してくれたまえ。そろそろ、このパターンも飽きてきたし、読者もうんざりしている頃だと思うよ」

「読者・・・?それはそうと、またまた嫌そうな顔をしましたね。けど、今度のは完璧なんだよ。しかも、そんな大それたものは作らなかった。どうだい、これだけでも十分に安心できるだろう?」

「ほぅ。大それたものでなければ、前回までのようなことにはならなさそうだね。で、今度はどんな機能なんだい?」

「それはだね、これだ。無限体力回復装置!つまり、どんなに疲れていても、たちどころに体力を回復してくれる。徹夜も数日続けて対応できるし、いや、それどころか、もう人類は睡眠を取らなくても生きていけるんだ。分かるかい。これで人生は二倍になるんだ!残念なことに、飽きに対しては回復されないが、それでもモチベーションが下がらなければそれに対してずっと作業を続けることが可能なんだよ。とにかくだ、寝ないで過ごせるってことだよ。もう、名前は安眠妨害で良いかと思ってるくらいだね」

「す、凄いじゃないか。今までよりもずっと大それたものに聞こえるよ!安眠も何も、寝ないで済むんだから安眠妨害って名前はよく分からないけど!」

「ははは、とにかく寝なくて済むんだよ。安眠妨害で良いじゃないか。これはね、皮肉だよ。そして、この機械。基本機能は既にテスト済み。なんと、今の私は前回から数ヶ月間、ほぼ寝ないで起きているのだ!」

「な、なんだって!これはもう、安全圏内じゃないか」

「そう、安眠妨害じゃなくて安全圏内!言っててよくわからなくなってきてるが、つまり、今までの発明の中では一番安全なんだ!」

「ちょうど、昨日体力仕事があってね、実は体がギシギシなっているんだ。ちょっとそれを使ってみてはもらえないか?」

「ハハハ、実は私も徹夜明けでね。ちょうど良かった。これで体力を回復させようではないか。それでは、スイッチオン!」


「あなたー?・・・あら、二人とも気持ち良さそうに寝てるのね。疲れてるのかしら。安眠妨害はいけないよね、このままにしておきましょう」



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